看護師のためのPES方式完全ガイド:初心者向けに徹底解説
看護師として、患者さんの状態を的確に把握し、適切なケアを提供することは、私たちにとって最も重要な使命です。そのためには、PES方式を理解し、実践することが不可欠です。この記事では、PES方式の基礎から実践的な活用方法まで、分かりやすく解説します。
患者さんの状態を正確に捉え、より質の高い看護を提供できるよう、一緒に学んでいきましょう。
PES方式とは?看護における役割と重要性
看護師として、患者さんの状態を的確に把握し、適切なケアを提供することは、私たちの重要な使命です。 そのために、PES方式の理解と実践は不可欠です。PES方式は、看護師が患者さんの問題を正確に捉え、効果的な看護計画を立案するための強力なツールとなります。
このセクションでは、PES方式の基本的な概念とその看護における役割と重要性について解説します。
P(Problem):問題の特定
P(Problem)は、患者さんの抱える問題を明確にすることです。これは、看護師が患者さんを観察し、収集した情報に基づいて行われます。問題は、身体的、精神的、社会的な側面から総合的に捉える必要があります。例えば、「呼吸困難」「不安」「社会的孤立」などが問題として挙げられます。
E(Etiology):問題の原因
E(Etiology)は、問題の原因を特定することです。問題の原因を理解することで、より適切な介入方法を選択することができます。原因の特定には、病歴、検査データ、患者さんへの聞き取りなど、多角的な情報収集が不可欠です。原因が特定できれば、根本的な解決に向けたアプローチが可能になります。
S(Symptoms):問題の症状
S(Symptoms)は、問題によって現れる症状を特定することです。症状を把握することで、問題の深刻度や変化を評価し、看護介入の効果を測定することができます。症状は、患者さんの主観的な訴え(自覚症状)と、客観的な観察結果(他覚症状)の両方を含みます。
例えば、「息切れ」「チアノーゼ」「不安感」「動悸」などが症状として挙げられます。
PES方式を用いた看護診断のステップ
看護診断は、患者さんの問題を特定し、適切なケアを提供するための重要なプロセスです。PES方式は、この看護診断を効果的に行うためのフレームワークを提供します。以下に、PES方式を用いた看護診断のステップを詳しく解説します。
患者の状態の観察と情報収集
まずは、患者さんの状態を正確に把握するための情報収集から始めます。これには、患者さんの病歴、現病歴、身体的・精神的状態、生活習慣、社会的背景など、多岐にわたる情報を収集することが含まれます。観察、問診、身体検査、検査データなど、様々な方法を用いて情報を集めましょう。収集した情報は、後の看護診断を立てるための重要な基盤となります。
情報収集の際には、以下の点に注意しましょう。
- 患者さんとの信頼関係を築き、積極的にコミュニケーションを図る
- 患者さんの言葉だけでなく、非言語的なサインにも注意を払う
- 客観的なデータと主観的な情報を区別して記録する
- 必要に応じて、家族や関係者からも情報を収集する
問題(P)の特定:看護問題の明確化
収集した情報をもとに、患者さんに生じている問題を特定します。この「問題(P)」は、看護師が解決すべき対象となるものであり、患者さんの健康状態に影響を与える可能性のあるものです。問題の特定には、情報収集で得られたデータの中から、異常値や異常な兆候、患者さんの訴えなどを注意深く分析し、関連する情報を関連付けて考えることが重要です。
例えば、「呼吸困難」「疼痛」「不安」などが問題として挙げられます。
問題を明確にする際には、以下の点を考慮しましょう。
- 問題は、患者さんの状態を正確に反映しているか
- 問題は、看護師が介入することで解決できるものか
- 問題は、優先順位を付けて対応する必要があるか
原因(E)の特定:問題発生の原因を分析
特定された問題の原因(E:Etiology)を特定します。原因を理解することで、適切な看護介入を計画し、問題の根本的な解決を目指すことができます。原因の特定には、問題に関連する要因を多角的に分析し、患者さんの病態生理、生活習慣、環境要因などを考慮する必要があります。
例えば、「呼吸困難」の原因が「喘息」である、あるいは「疼痛」の原因が「手術後の創部の痛み」であるなど、問題と原因の関係性を明確にします。
原因を特定する際には、以下の点を意識しましょう。
- 原因は、科学的根拠に基づいているか
- 原因は、患者さんの状況に合致しているか
- 原因は、複数の要因が複合的に影響している可能性も考慮する
症状(S)の特定:問題のサインや症状を特定
問題の症状(S:Symptoms)を具体的に特定します。症状を明確にすることで、問題の深刻度を評価し、看護介入の効果をモニタリングすることができます。症状には、患者さんの自覚症状(主観的情報)と、看護師が観察できる客観的情報が含まれます。
例えば、「呼吸困難」の症状として、「呼吸回数の増加」「チアノーゼ」「呼吸補助筋の使用」などが挙げられます。
症状を特定する際には、以下の点に留意しましょう。
- 症状は、客観的に測定可能な指標を含む
- 症状は、患者さんの状態の変化を反映している
- 症状は、問題の早期発見と早期対応に役立つ
看護診断の記述と検証
P、E、Sの情報を統合し、看護診断を記述します。看護診断は、「問題(P)は、原因(E)に関連して、症状(S)として現れている」という形式で記述するのが一般的です。
例えば、「呼吸困難(P)は、気道狭窄(E)に関連して、呼吸回数の増加とチアノーゼ(S)として現れている」のように記述します。
この記述は、患者さんの問題を明確に表現し、看護計画を立てる上での重要な基盤となります。
看護診断の記述後には、その妥当性を検証することが重要です。患者さんの情報と照らし合わせ、診断が正確であるか、他の看護師や専門家と意見交換を行い、多角的に検討することで、看護診断の質を高めることができます。
PES方式を活用することで、看護師は患者さんの状態を多角的に評価し、より的確な看護診断を行うことができます。このプロセスを通じて、患者さんのQOL向上を目指し、質の高い看護を提供しましょう。

PES方式に基づいた看護計画の立案
PES方式は、看護診断を基に具体的な看護計画を立案する上でも、非常に役立ちます。患者さんの問題点を明確にし、それに対する目標設定、具体的なケアプラン、そして評価を行うことで、より質の高い看護を提供できます。ここでは、PES方式に基づいた看護計画の立案方法について、詳しく見ていきましょう。
目標設定:患者にとっての望ましい状態
看護計画の第一歩は、患者さんにとっての望ましい状態、つまり目標を設定することです。この目標は、患者さんの問題点(P)を解決し、より良い状態へと導くためのものです。目標設定においては、SMARTの原則を意識することが重要です。
- S(Specific:具体的):目標は具体的で、誰が見ても理解できるように明確に記述します。
- M(Measurable:測定可能):目標の達成度を客観的に測定できる指標を設定します。
- A(Achievable:達成可能):現実的に達成可能な目標を設定します。高すぎる目標は患者さんの意欲を削ぎ、低すぎる目標は効果を生まない可能性があります。
- R(Relevant:関連性):患者さんのニーズや問題点と関連性の高い目標を設定します。
- T(Time-bound:期限付き):目標達成のための期限を設定します。
例えば、「呼吸困難」という問題に対しては、「1週間以内に呼吸数が安静時で1分間に20回以下となり、酸素飽和度が95%以上を維持する」といった具体的な目標を設定できます。このようにSMART原則に沿って目標を設定することで、看護計画の方向性が明確になり、効果的なケアに繋がります。
計画:目標達成のための具体的な方法
目標が定まったら、次にその目標を達成するための具体的な看護計画を立案します。この計画は、患者さんの状態やニーズに合わせて個別に作成する必要があります。計画には、以下のような内容を含めます。
- アセスメント:患者さんの状態を継続的に観察し、変化を記録するための方法を具体的に記述します。
- ケアの実施内容:具体的な看護ケアの内容、方法、頻度を明確にします。例えば、「体位変換を2時間ごとに行う」「酸素投与量を1分間に2リットルに調整する」など、具体的な行動を記述します。
- 指導・教育:患者さんや家族に対して、病状や治療に関する説明、セルフケアの方法などを指導するための計画を立てます。
- 関連職種との連携:医師や理学療法士など、他の医療従事者との連携方法を具体的に記述します。
計画を立てる際には、根拠に基づいた看護(EBN:Evidence-Based Nursing)を意識し、最新のエビデンスに基づいたケアを選択することが重要です。
また、患者さんの価値観や生活習慣を尊重し、患者さん自身が積極的にケアに参加できるような計画を立てることも大切です。
実施:計画に基づいたケアの実施
立案した看護計画に基づき、実際にケアを実施します。この段階では、計画通りにケアが行われているか、患者さんの状態に変化がないかなどを注意深く観察することが重要です。ケアを実施する際には、患者さんとのコミュニケーションを密にし、患者さんの不安や疑問を解消しながら進めるように心がけましょう。
また、ケアの実施中に予期せぬ問題が発生した場合は、柔軟に対応し、必要に応じて計画を修正することも重要です。
評価:ケアの効果の検証と修正
ケアを実施した後には、必ず評価を行い、その効果を検証します。評価は、目標の達成度を測定し、計画が適切であったかどうかを判断するために行います。評価には、患者さんの状態の変化、症状の改善、合併症の有無などを記録します。
評価の結果、目標が達成できていない場合は、計画の修正が必要となります。計画のどの部分に問題があったのかを分析し、原因を特定した上で、計画を修正します。修正した計画に基づき、再度ケアを実施し、評価を行うというサイクルを繰り返すことで、より効果的な看護を提供できます。継続的な評価と計画の修正を通じて、看護の質を向上させることが重要です。
PES方式におけるリスク問題への対処法
看護の現場では、患者さんの状態を的確に把握し、潜在的なリスクを予測し、適切な対策を講じることが不可欠です。PES方式は、リスク問題を特定し、効果的に対応するための強力なツールとなります。ここでは、リスク問題への具体的な対処法について解説します。
リスク問題の特定
リスク問題の特定は、適切なケアを提供するための最初のステップです。患者さんの状態を多角的に評価し、リスク要因を洗い出すことが重要です。具体的には、以下の点を意識しましょう。
- 情報収集: 患者さんの病歴、検査データ、既往歴、生活習慣など、あらゆる情報を収集します。
- アセスメント: 収集した情報を基に、患者さんの現在の状態を詳細に評価します。身体的、精神的、社会的な側面から総合的に判断します。
- リスク要因の特定: 収集した情報とアセスメントの結果から、転倒リスク、褥瘡リスク、誤嚥リスクなど、具体的なリスク要因を特定します。
予防策の実施
リスク要因が特定されたら、次にそれらを軽減するための予防策を講じます。予防策は、リスクの種類や患者さんの状態に合わせて、個別に計画・実施する必要があります。以下に、具体的な予防策の例をいくつか示します。
- 転倒リスク:
- 環境整備:床の整理整頓、滑りやすい場所への注意喚起、手すりの設置など。
- 薬剤管理:転倒リスクのある薬剤の使用状況を確認し、必要に応じて医師と連携して調整する。
- 運動指導:適切な運動プログラムを提供し、筋力やバランス能力を向上させる。
- 褥瘡リスク:
- 体位変換:2時間ごとの体位変換を行い、圧迫を分散する。
- 栄養管理:栄養状態を評価し、適切な栄養を摂取できるようにサポートする。
- スキンケア:皮膚の清潔を保ち、保湿剤を使用して皮膚を保護する。
- 誤嚥リスク:
- 食事介助:食事形態の調整、適切な姿勢での食事、嚥下訓練など。
- 口腔ケア:口腔内の清潔を保ち、誤嚥性肺炎のリスクを軽減する。
- 観察:食事中の様子を注意深く観察し、異変に早期に気付く。
経過観察
予防策を実施した後も、患者さんの状態を継続的に観察し、その効果を評価することが重要です。経過観察を通じて、リスクの再評価を行い、必要に応じて対策を修正します。具体的には、以下の点を実施します。
- モニタリング: 定期的に患者さんの状態を観察し、記録する。
- 評価: 予防策の効果を評価し、目標達成度を確認する。
- 修正: 評価結果に基づいて、必要に応じて予防策を修正する。
リスク問題への対応は、一過性のものではなく、継続的な取り組みが必要です。患者さんの状態は常に変化するため、状況に応じて柔軟に対応し、より安全で質の高い看護を提供できるよう努めましょう。

PES方式を用いた記録方法と注意点
看護師として、日々の業務を円滑に進めるためには、正確な記録が不可欠です。特に、PES方式を用いた看護記録は、患者さんの状態を多角的に捉え、適切なケアを提供するための重要な基盤となります。ここでは、PES方式を用いた記録の重要性と、記録する際の注意点について詳しく解説します。
正確な記録方法
PES方式に基づく記録は、患者さんの状態を客観的に記録し、看護師間で情報を共有するための有効な手段です。記録の正確性を高めるためには、以下の点を意識しましょう。
- 問題(P)の明確化: 患者さんの抱える問題を具体的に記述します。例えば、「呼吸困難」や「疼痛」など、具体的な症状を記載することが重要です。
- 原因(E)の特定: 問題の原因を、医学的根拠に基づいて特定します。例えば、「手術後の創部からの出血」や「不安による過呼吸」など、原因を特定することで、適切なケアプランを立てることができます。
- 症状(S)の詳細な記録: 問題のサインや症状を、客観的な情報に基づいて詳細に記録します。例えば、「SpO2 90%」や「顔面蒼白、冷汗」など、具体的なデータを記載することで、患者さんの状態を正確に把握できます。
- 客観的な情報の活用: 主観的な表現を避け、客観的な情報に基づいて記録します。例えば、「患者は苦しそう」ではなく、「呼吸数30回/分、チアノーゼあり」のように、具体的な観察結果を記載することが求められます。
- タイムリーな記録: 観察した内容や実施したケアは、速やかに記録します。時間の経過と共に、記録内容が曖昧になることを防ぎ、正確な情報伝達に繋げます。
これらの記録方法を実践することで、患者さんの状態を正確に把握し、より質の高い看護を提供することができます。
記録上の注意点
正確な記録を行うためには、いくつかの注意点があります。以下の点に留意して記録を行いましょう。
- 専門用語の適切な使用: 医療専門用語は正確に使用し、一般の方にも理解できるように平易な言葉で補足説明を加えましょう。
- 個人情報の保護: 患者さんのプライバシーを尊重し、個人情報が漏洩しないように注意しましょう。記録は、施錠管理された場所に保管し、不要な情報開示は避けることが重要です。
- 記録の整合性: 記録内容に矛盾がないように注意しましょう。異なる記録間で情報が一致しているか確認し、矛盾がある場合は修正しましょう。
- 記録の継続性: 患者さんの状態が変化した場合や、新たな情報が得られた場合は、速やかに記録を更新しましょう。継続的な記録により、患者さんの状態の推移を把握し、適切なケアを提供することができます。
- 記録の法的側面: 記録は、医療行為の正当性を証明する重要な証拠となります。改ざんや虚偽の記載は厳禁であり、記録の正確性と信頼性を確保することが重要です。
これらの注意点を守り、正確な記録を心がけることで、患者さんの安全を守り、質の高い看護を提供することができます。記録は、看護師としての責任を果たす上で、非常に重要な役割を担っていることを常に意識しましょう。
学習を深めるためのリソースとまとめ
この記事を通じて、PES方式の理解を深め、看護実践に役立てるためのお手伝いができたなら幸いです。最後に、更なる学びを深めるためのリソースと、本記事のまとめをお伝えします。
関連書籍・文献
PES方式や看護に関する理解を深めるためには、書籍や文献による学習が不可欠です。以下に、おすすめの書籍や文献をいくつか紹介します。
- 看護診断に関する書籍:PES方式を用いた看護診断の立て方について、詳細な解説がされています。事例を通して学ぶことで、より実践的な知識を身につけることができます。
- 看護過程に関する書籍:看護過程全体の理解を深めることで、PES方式の活用がより効果的になります。看護計画の立案や評価についても学ぶことができます。
- 専門雑誌:最新の看護研究や事例報告が掲載されており、常に最新の情報を得ることができます。
これらの書籍や文献を通じて、理論と実践のバランスを取りながら、着実に知識を深めていくことができます。
オンライン学習サイト
現代では、オンライン学習サイトも非常に有効な学習ツールです。場所や時間にとらわれず、自分のペースで学習を進めることができます。以下におすすめのオンライン学習サイトを紹介します。
- 看護師向けのe-ラーニングサイト:PES方式に関する基礎知識から応用まで、幅広い内容を網羅したコースが用意されています。
- 動画サイト:PES方式の解説動画や、看護技術のデモンストレーション動画などが公開されています。
- 専門家のブログやWebサイト:看護に関する最新情報や、PES方式の実践例などを発信しているサイトもあります。
これらのオンライン学習サイトを活用することで、多様な情報源から学び、理解を深めることができます。
PES方式は、患者さんの状態を的確に把握し、質の高い看護を提供するための強力なツールです。この記事で得た知識を活かし、日々の看護実践に活かしてください。継続的な学習と実践を通して、看護師としてのスキルを向上させ、患者さんのQOL向上に貢献できることを願っています。

監修者プロフィール

宮本 大輔
聖ルチア病院、福岡県立精神利用センター太宰府病院にて勤務
2017年 リアン訪問看護 設立
2022年 ネクストリンク訪問看護 設立
2024年 地域創生包括支援協会 理事
【資格】
・看護師
・相談支援専門員
・サービス等管理責任者

出利葉 貴弘
-医療・福祉分野の情報発信とDX推進を担う事業責任者
株式会社LIH 代表取締役
-Webマーケター/コンテンツディレクター
福岡を拠点に、これまで500社以上のWeb制作・マーケティング支援を行ってきました。2025年より「訪問看護テックナビ」の責任者として、医療・福祉分野の情報発信やIT導入を推進しています。
訪問看護で働く方々や、利用者・ご家族のために、「わかりやすく信頼できる情報」を届けることが私たちの役割です。本サイトを通じて、現場を支える力になれれば幸いです。
【経歴】
2015年 個人事業にてWebマーケティング業を開始
2016年 アイティーラボ株式会社(久留米市) 設立
2018年 株式会社LIH(福岡市) へ社名変更
2025年 株式会社テックナビ 取締役就任「訪問看護テックナビプロジェクト開始」
【保有スキル・資格など】
・Web制作(ディレクション・設計・ライティング)
・SEOコンサルティング(実務10年以上)
・AI×業務効率化コンサル