陰部洗浄の全て|看護師が教える正しい方法と注意点
陰部洗浄は、デリケートゾーンの清潔を保つための重要なケアです。しかし、適切な方法や頻度が分からず、不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?この記事では、看護師の視点から、陰部洗浄の目的、正しい手順、注意点などを分かりやすく解説します。高齢者の方や介護が必要な方のケアについても詳しく説明しますので、安心してケアに取り組めるように、ぜひ最後まで読んでみてください。
陰部洗浄は、デリケートな部分を清潔に保ち、健康を維持するために不可欠なケアです。このケアは、単に清潔さを保つだけでなく、心身の健康にも大きく影響します。ここでは、陰部洗浄の目的と、その重要性について詳しく解説していきます。
清潔保持による感染予防
陰部は、排泄や汗などにより雑菌が繁殖しやすい場所です。適切な洗浄を行わないと、細菌が繁殖し、感染症を引き起こす可能性があります。具体的には、以下のようなリスクが考えられます。
- 膀胱炎:尿道から細菌が侵入し、炎症を引き起こします。
- 外陰炎:陰部のかゆみや腫れ、痛みが生じます。
- 性感染症(STI):性行為を通じて感染する病気のリスクが高まります。
陰部洗浄は、これらの感染症を予防し、健康的な状態を維持するために非常に重要です。
皮膚トラブルの予防
陰部は、皮膚が薄くデリケートな部分です。不適切なケアや、汚れの蓄積は、かぶれやかゆみ、湿疹などの皮膚トラブルの原因となります。適切な陰部洗浄は、これらの皮膚トラブルを予防し、快適な状態を保つために役立ちます。
快適な生活の支援
清潔な状態を保つことは、心身ともに快適な生活を送るために不可欠です。陰部洗浄によって臭いや不快感が軽減され、自信を持って日常生活を送ることができます。特に、高齢者や介護が必要な方にとっては、清潔を保つことが、生活の質(QOL)を向上させるために非常に重要です。

陰部洗浄の手順:準備から後片付けまで
陰部洗浄は、デリケートゾーンの清潔を保つために不可欠なケアです。しかし、適切な手順で行わないと、かえって肌トラブルを引き起こす可能性もあります。ここでは、陰部洗浄を安全かつ効果的に行うための具体的な手順を、準備から後片付けまで、詳しく解説します。
必要な物品の準備
陰部洗浄を始める前に、必要な物品をすべて揃えておきましょう。これにより、スムーズなケアが可能になり、途中で慌てることもなくなります。
- 洗浄液: ぬるま湯または、陰部洗浄に適した専用の洗浄剤を用意します。
- ガーゼまたは柔らかいタオル: 洗浄に使用します。刺激の少ない素材を選びましょう。
- 洗面器: 洗浄液を入れるために使用します。
- 手袋: 感染予防のため、使い捨ての手袋を着用します。
- バスタオル: 洗浄後の身体を拭くために使用します。
- 汚物入れ: 使用済みのガーゼやタオルなどを捨てるために使用します。
- 必要に応じて: 石鹸、保湿剤、清拭剤などを用意します。
洗浄液の温度調整
洗浄液の温度は、快適さと安全性の両方を考慮して調整する必要があります。
- 適切な温度: 38〜40℃程度のぬるま湯が適温です。
- 温度確認: 手首の内側で温度を確認し、熱すぎないか確認しましょう。
- 洗浄剤の使用: 専用の洗浄剤を使用する場合は、製品の説明書に従って温度を調整しましょう。
洗浄方法(女性・男性別)
洗浄方法は、性別によって異なります。それぞれの方法を正しく理解し、実践しましょう。
女性の洗浄方法
- 手洗いと手袋の着用: 石鹸で手を洗い、使い捨て手袋を着用します。
- 陰部の洗浄: 洗浄液を含ませたガーゼで、陰部を優しく洗います。
- 前から後ろへ、陰唇の間や周囲を丁寧に洗いましょう。
- 石鹸を使用する場合は、少量でよく泡立て、洗い残しのないようにしましょう。
- 洗い流し: 洗浄液で洗い流します。
- 乾燥: 柔らかいタオルで優しく水分を拭き取ります。
- ゴシゴシ擦らず、軽く押さえるように拭きましょう。
男性の洗浄方法
- 手洗いと手袋の着用: 石鹸で手を洗い、使い捨て手袋を着用します。
- 陰部の洗浄: 洗浄液を含ませたガーゼで、陰部を優しく洗います。
- 包皮がある場合は、包皮を剥いて、亀頭とその周囲を丁寧に洗いましょう。
- 石鹸を使用する場合は、少量でよく泡立て、洗い残しのないようにしましょう。
- 洗い流し: 洗浄液で洗い流します。
- 乾燥: 柔らかいタオルで優しく水分を拭き取ります。
- 包皮を元に戻し、乾燥させましょう。
乾燥方法
洗浄後の乾燥は、清潔を保つ上で非常に重要です。
- 優しく拭く: 柔らかいタオルで、優しく水分を拭き取ります。
- 自然乾燥: 可能であれば、しばらく自然乾燥させると、より清潔に保てます。
- 保湿: 乾燥しやすい方は、保湿剤を使用しましょう。
観察と記録
洗浄後には、陰部の状態を観察し、記録することも大切です。
- 異常の確認: 発赤、腫れ、かゆみ、異臭、おりものの変化など、異常がないか確認します。
- 記録: 観察した内容を記録し、必要に応じて医療機関に相談しましょう。
- 変化への対応: 異常が見られた場合は、自己判断せず、専門家に相談しましょう。

高齢者や介護が必要な方の陰部洗浄
高齢者や介護が必要な方の陰部洗浄は、単に清潔を保つだけでなく、尊厳を守り、快適な生活を支えるために非常に重要です。ここでは、特別な配慮が必要となる高齢者や介護が必要な方の陰部洗浄について、具体的な方法や注意点、そしてご家族との連携について詳しく解説していきます。
臥床時・座位時の洗浄方法
高齢者や介護が必要な方の多くは、自力での移動が難しく、臥床または座位での体位保持が必要となります。それぞれの状況に応じた適切な洗浄方法を理解し、安全かつ効果的にケアを行いましょう。
臥床時の洗浄方法
- 必要な物品を準備します(洗浄液、清拭タオル、洗面器、手袋、防水シーツなど)。
- 体位を側臥位にします。
- 陰部を清拭タオルで優しく拭き、洗浄液で丁寧に洗います。
- 石鹸を使用する場合は、よく泡立ててから使用し、洗い残しがないように注意します。
- 洗い終わったら、清潔なタオルで水分を拭き取り、必要に応じて保湿ケアを行います。
- 体位を整え、衣類を整えます。
座位時の洗浄方法
- 必要な物品を準備します。
- ポータブルトイレや洗面器を準備し、座位のまま陰部を洗います。
- 清拭タオルで優しく拭き、洗浄液で丁寧に洗います。
- 洗い終わったら、清潔なタオルで水分を拭き取り、必要に応じて保湿ケアを行います。
- 衣類を整えます。
これらの方法を参考に、対象者の状態に合わせて、安全に配慮しながら洗浄を行いましょう。
認知症の方への対応
認知症の方への陰部洗浄は、拒否や抵抗がある場合があり、特別な配慮が必要です。
- 声かけと説明: 洗浄を行う前に、優しく声をかけ、これから何をするのかを具体的に説明します。
- 安心感を与える: 落ち着いた声で話し、笑顔を見せるなど、安心感を与えるようなコミュニケーションを心がけましょう。
- 抵抗がある場合: 無理強いせず、一旦中断し、時間を置いてから再度試みるなど、臨機応変に対応します。
- 家族との連携: 普段の生活での好みや習慣などを家族から聞き、ケアに活かしましょう。
認知症の方の心に寄り添い、穏やかなケアを心がけることが大切です。
合併症への配慮
高齢者は、糖尿病や皮膚疾患など、様々な合併症を抱えている場合があります。それぞれの状態に合わせて、適切なケアを行うことが重要です。
- 糖尿病: 陰部の皮膚が乾燥しやすいため、保湿をしっかり行いましょう。
- 皮膚疾患: 刺激の少ない洗浄剤を使用し、皮膚の状態を観察しながらケアを行いましょう。
- 褥瘡: 褥瘡がある場合は、患部に触れないように注意し、医師や看護師の指示に従いましょう。
合併症がある場合は、専門家と連携し、適切なケアを行いましょう。
家族への説明と連携
陰部洗浄は、ご本人だけでなく、ご家族にとっても心配事の一つです。ご家族にケアの方法や目的を説明し、連携を深めることで、より良いケアを提供できます。
- 情報共有: ケアの内容や手順、注意点などを具体的に説明し、理解を深めてもらいましょう。
- 疑問への対応: ご家族からの疑問や不安に寄り添い、丁寧に対応しましょう。
- 協力体制の構築: 普段の生活での様子や変化について情報を共有し、協力してケアに取り組みましょう。
ご家族との連携を通じて、より安心できるケアを提供しましょう。

陰部洗浄に関するQ&A
陰部洗浄について、様々な疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは、陰部洗浄に関するよくある質問とその回答をまとめました。日々のケアに役立てて、清潔で快適な生活を送りましょう。
洗浄の頻度は?
陰部洗浄の頻度は、個々の状況やライフスタイルによって異なりますが、基本的には1日に1回、入浴時や排泄後に洗浄するのが一般的です。しかし、生理中やおりものの量が多い時、尿や便で汚れてしまった場合は、その都度洗浄するようにしましょう。
陰部洗浄の頻度に関する注意点は以下の通りです。
- 毎日行う場合:石鹸の使用は控え、ぬるま湯で優しく洗う。
- 排泄後:トイレットペーパーで優しく拭き、必要に応じて洗浄する。
- 生理中:経血で汚れやすいため、こまめに洗浄する。
- おりものが多い時:清潔を保つため、必要に応じて洗浄する。
どんな洗浄剤を使うべき?
陰部洗浄に使用する洗浄剤は、デリケートゾーンのpHバランスを崩さない、低刺激性のものを選ぶことが重要です。おすすめは、弱酸性のソープや洗浄料です。また、無香料、無着色のものを選ぶと、より安心です。
洗浄剤を選ぶ際のポイントは以下の通りです。
- 弱酸性であること:デリケートゾーンのpHバランスを保つため。
- 低刺激性であること:肌への負担を減らすため。
- 無香料・無着色であること:アレルギーのリスクを避けるため。
皮膚トラブルが起きた時の対処法は?
陰部洗浄後に、かゆみ、赤み、痛みなどの皮膚トラブルが起きた場合は、すぐに洗浄を中止し、医療機関を受診しましょう。自己判断で市販の薬を使用せず、専門医の指示に従うことが大切です。
皮膚トラブルへの対処法は以下の通りです。
- 洗浄を中止する:症状を悪化させないため。
- 医療機関を受診する:専門医の診断と治療を受ける。
- 自己判断で薬を使用しない:症状を悪化させる可能性があるため。
医療機関でのケアとの連携
陰部洗浄に関する不安や疑問がある場合は、遠慮なく医師や看護師に相談しましょう。定期的な検診を受け、専門家のアドバイスを受けることで、より適切なケアを行うことができます。
医療機関との連携の重要性は以下の通りです。
- 専門家のアドバイス:正しいケア方法や注意点について学ぶ。
- 定期的な検診:早期発見、早期治療に繋げる。
- 情報共有:自分の状態を正しく伝え、適切なケアを受ける。

専門家によるアドバイス
陰部洗浄は、デリケートな部分の健康を守る上で非常に重要なケアです。しかし、正しい知識と方法を知らないまま行うと、かえってトラブルを引き起こす可能性もあります。ここでは、陰部洗浄に関する専門家からの貴重なアドバイスをご紹介します。看護師、介護士、医師、それぞれの専門家が、それぞれの視点から、陰部洗浄のポイントを分かりやすく解説します。
看護師からの注意点
看護師は、日々の臨床経験から、陰部洗浄における重要なポイントを熟知しています。以下に、看護師からの具体的なアドバイスをまとめました。
- 清潔の基本:陰部洗浄の目的は、清潔を保ち、感染症を予防することです。石鹸の使用は、必要な場合のみに限定し、刺激の少ないものを選びましょう。
- 観察の重要性:洗浄前には、皮膚の状態をよく観察しましょう。赤み、腫れ、かゆみ、異臭、おりものの異常など、気になることがあれば、医療機関に相談してください。
- 適切な手技:洗浄時は、力を入れすぎず、優しく洗いましょう。特に、皮膚のシワの間や陰部の奥まで丁寧に洗うことが大切です。
- 乾燥:洗浄後は、清潔なタオルで優しく水分を拭き取り、しっかりと乾燥させることが重要です。
- 情報共有:患者さんや入居者の方とのコミュニケーションを大切にし、体調や不安なことなど、気になることがあれば、遠慮なく相談してもらいましょう。
介護士からのケアのポイント
介護士は、日々の介護の現場で、陰部洗浄を含む様々なケアを行っています。ここでは、介護士が日々のケアの中で実践している、具体的なポイントをご紹介します。
- 尊厳の尊重:陰部洗浄は、プライベートな部分に触れるケアです。介護を受ける方の尊厳を尊重し、安心感を与えるような声かけや対応を心がけましょう。
- 体調の確認:体調や気分がすぐれない場合は、無理に洗浄を行うのではなく、体調の良い時に行うなど、柔軟に対応しましょう。
- 負担軽減:体位変換が難しい場合は、体への負担を最小限に抑える工夫をしましょう。
- 連携:看護師や他の介護士と連携し、情報共有を密にすることで、より質の高いケアを提供できます。
- 記録:洗浄の手順、使用した物品、皮膚の状態、本人の反応などを記録し、日々のケアに役立てましょう。
医師からの医療的な観点
医師は、医学的な知識に基づき、陰部洗浄に関する注意点や、医療的なアドバイスを提供します。
- 感染症の予防:陰部洗浄は、感染症の予防に非常に重要です。特に、高齢者や免疫力の低下している方は、感染症にかかりやすいので、丁寧なケアが必要です。
- 皮膚トラブルへの対応:皮膚に異常が見られた場合は、自己判断せず、医師に相談し、適切な治療を受けましょう。
- 疾患との関連:糖尿病やその他の疾患がある方は、陰部洗浄の方法や注意点が異なる場合があります。医師の指示に従い、適切なケアを行いましょう。
- 薬剤の使用:皮膚炎や感染症の治療のために、薬を使用する場合は、医師の指示に従い、正しく使用しましょう。
- 定期的な検診:気になる症状がある場合は、放置せずに、定期的に医療機関を受診し、専門家の診断を受けましょう。
専門家からのアドバイスを参考に、正しい知識と方法で陰部洗浄を行い、清潔で健康的な生活を送りましょう。
まとめ:清潔で快適な生活のための陰部洗浄
この記事を通じて、陰部洗浄に関する様々な情報を提供してきました。陰部洗浄は、単に清潔さを保つだけでなく、健康的な生活を送る上で非常に重要なケアです。正しい知識と方法を身につけ、日々のケアに取り入れることで、ご自身の生活の質を向上させることができるでしょう。
陰部洗浄の目的は、感染症のリスクを減らし、皮膚トラブルを予防し、快適な生活を送ることです。適切な手順を踏むことで、これらの目的を達成できます。また、高齢者や介護が必要な方へのケアにおいては、個々の状況に合わせた配慮が不可欠です。
陰部洗浄に関する疑問や不安は、一人で抱え込まず、専門家や医療機関に相談することも大切です。今回の情報が、皆様にとって清潔で快適な生活を送るための一助となれば幸いです。
監修者プロフィール

宮本 大輔
聖ルチア病院、福岡県立精神利用センター太宰府病院にて勤務
2017年 リアン訪問看護 設立
2022年 ネクストリンク訪問看護 設立
2024年 地域創生包括支援協会 理事
【資格】
・看護師
・相談支援専門員
・サービス等管理責任者

出利葉 貴弘
-医療・福祉分野の情報発信とDX推進を担う事業責任者
株式会社LIH 代表取締役
-Webマーケター/コンテンツディレクター
福岡を拠点に、これまで500社以上のWeb制作・マーケティング支援を行ってきました。2025年より「訪問看護テックナビ」の責任者として、医療・福祉分野の情報発信やIT導入を推進しています。
訪問看護で働く方々や、利用者・ご家族のために、「わかりやすく信頼できる情報」を届けることが私たちの役割です。本サイトを通じて、現場を支える力になれれば幸いです。
【経歴】
2015年 個人事業にてWebマーケティング業を開始
2016年 アイティーラボ株式会社(久留米市) 設立
2018年 株式会社LIH(福岡市) へ社名変更
2025年 株式会社テックナビ 取締役就任「訪問看護テックナビプロジェクト開始」
【保有スキル・資格など】
・Web制作(ディレクション・設計・ライティング)
・SEOコンサルティング(実務10年以上)
・AI×業務効率化コンサル