看護師のための足浴完全ガイド
足浴は、患者さんの心身のリラックスや血行促進に効果的な看護技術です。この記事では、足浴の実施方法から注意点までを分かりやすく解説し、看護師のスキルアップに役立つ情報を提供します。
足浴の目的と効果
足浴は、温かいお湯に足を浸すことで、心身のリラックスや血行促進を促す簡便な看護技術です。患者さんの状態に合わせて適切に行うことで、様々な効果が期待できます。具体的には、以下の3つの目的と効果が挙げられます。
清潔保持と感染予防
足浴は、足の清潔を保ち、細菌や真菌の繁殖を防ぐ効果があります。特に、糖尿病患者や高齢者など、皮膚の抵抗力が低下している患者さんにとって、足浴による清潔保持は感染予防に繋がります。適切な洗浄と乾燥によって、皮膚の健康状態を維持し、感染症のリスクを軽減することが可能です。
血行促進とリラックス効果
温かいお湯に足を浸すことで、末梢血管が拡張し、血行が促進されます。これにより、冷え性やむくみの改善、疲労回復に効果が期待できます。また、温浴効果によるリラックス作用は、精神的なストレスを軽減し、患者の精神状態の安定にも寄与します。心地よい温かさで心身を癒やし、安らかな時間を提供できるでしょう。
疼痛軽減と精神的ケア
足浴は、足や下肢の痛みを軽減する効果も期待できます。温熱作用による筋肉の緩和や、精神的なリラックス効果によって、疼痛の軽減に繋がることがあります。さらに、足浴を行う際には、患者さんとのコミュニケーションを図る機会にもなります。温かいケアを通して、患者さんの不安やストレスを軽減し、精神的なサポートを提供することが大切です。

足浴の準備
足浴を安全かつ効果的に行うためには、事前の準備が非常に重要です。患者さんの状態に合わせた適切な準備を行うことで、よりリラックスできる環境を提供し、快適な足浴を実現できます。準備には、必要な物品の確認と準備、そして適切な環境設定が不可欠です。
必要な物品と準備
足浴に必要な物品を事前に準備することで、スムーズな実施に繋がります。慌ただしい状況の中で必要なものを探す時間を省き、患者さんへのケアに集中できるよう、以下にリストアップしました。
- 洗面器または足浴器:患者さんの足が十分に浸かれる大きさのものを選びましょう。材質は、清潔に保ちやすく、保温性のあるものが好ましいです。
- 清潔なタオル:複数枚用意し、足や洗面器を拭くのに使用します。吸水性の良いタオルを選びましょう。
- 温度計:お湯の温度を正確に測るために必須です。デジタル温度計が便利です。
- 湯桶またはピッチャー:お湯を洗面器に注ぐための容器です。持ちやすく、注ぎやすいものを選びましょう。
- 石鹸または洗浄剤(必要に応じて):患者の足の状態に合わせて使用します。皮膚の弱い患者さんには、低刺激性のものを選びましょう。
- 椅子またはベッド:患者さんが楽な姿勢で足浴を受けられるように、適切な高さの椅子またはベッドを用意します。必要に応じて、クッションなどを使い、快適な姿勢をサポートしましょう。
- 記録用紙とペン:足浴の実施時間、水温、患者の反応などを記録します。
これらの物品に加え、患者さんの状態によっては、追加で必要なものも出てくる場合があります。例えば、足に疾患のある患者さんには、医師の指示に基づいた特別なケア用品が必要となることもあります。常に患者の状態を把握し、適切な準備を行うことが大切です。
環境設定と注意点
足浴を行う環境も、快適なケアに大きく影響します。患者さんがリラックスできる空間を作るために、以下のような点に注意しましょう。
- プライバシーの確保:カーテンやパーテーションなどで、患者さんのプライバシーを保護しましょう。落ち着いて足浴を受けられるよう、周囲の視線を遮断することが重要です。
- 室温調整:寒すぎず、暑すぎない快適な室温を保ちましょう。室温が低いと、患者さんが寒さを感じてリラックスできません。逆に、室温が高すぎると、汗をかいて不快感を覚える可能性があります。
- 換気:こまめな換気を行い、室内の空気を清潔に保ちましょう。足浴中は、湯気がこもりがちなので、特に注意が必要です。
- 滑り止めマット:洗面器を置く場所に滑り止めマットを敷くことで、転倒事故を防ぎます。安全な環境を確保することは、何よりも優先すべき事項です。
これらの点を考慮し、患者さんにとって安全で快適な環境を整えることで、より効果的な足浴を実施できます。準備段階での細やかな配慮が、患者さんの満足度を高めることに繋がるでしょう。

足浴の実施手順
足浴は、患者さんの心身のリラックスや血行促進に繋がる効果的な看護技術です。しかし、安全に効果的に実施するには、正しい手順を踏むことが重要です。ここでは、足浴の実施手順をステップごとに丁寧に解説します。患者さんの状態に合わせた適切な対応を心がけ、安全で快適な足浴を提供しましょう。
手順1:患者さんへの説明と同意取得
足浴を行う前に、必ず患者さんに手順や目的、注意点などを分かりやすく説明し、同意を得ることが不可欠です。特に、持病やアレルギーの有無、過去の足浴経験などを確認し、不安や疑問を解消することで、患者さんの協力を得やすくなります。説明は、患者さんの理解度に合わせて、ゆっくりと丁寧に行いましょう。同意書への署名・捺印も忘れずに行いましょう。
手順2:環境の準備と物品の確認
快適な環境を作ることは、患者さんのリラックスに繋がります。そのため、室温や照明、プライバシーに配慮した環境を整えましょう。次に、必要な物品を事前に準備し、確認します。不足しているものがないか、破損しているものがないかなどをチェックし、スムーズな実施に備えましょう。準備が整ったら、患者さんの状態や、使用する物品に問題がないかを確認します。
- 必要な物品:洗面器、バスタオル、フェイスタオル、温度計、石鹸、洗剤、清潔な水、脱脂綿など
- 環境:プライバシー確保、室温調整、適切な照明
手順3:足浴の実施
いよいよ足浴の実施です。手順を間違えると、患者さんに不快感を与えたり、事故につながる可能性もあるため、注意深く行いましょう。水温は、患者さんの状態を確認しながら、38~40℃に設定するのが一般的です。足浴時間は、10~15分程度が目安です。患者の状態に合わせて柔軟に対応することが重要です。また、患者の様子を注意深く観察し、不快感や異常がないかを確認しましょう。
- 適切な水温(38~40℃)の湯を洗面器に用意する。
- 患者の足を優しく洗面器に浸す。
- 患者の足を優しくマッサージする(必要に応じて)。
- 患者の様子を観察しながら、10~15分間足浴を行う。
手順4:終了後の処置と観察
足浴が終了したら、患者の足を優しく拭き取り、保湿クリームなどを塗布します。その後、患者の状態を十分に観察し、皮膚の異常や痛み、不快感などがないかを確認しましょう。異常が認められた場合は、速やかに医師や看護師に報告し、適切な処置を受けましょう。記録にも忘れず、患者の状態を正確に記録することが重要です。
- 患者の足を優しく拭き取る。
- 保湿クリームなどを塗布する。
- 患者の状態を観察し、記録する。
これらの手順を丁寧に、そして安全に実行することで、患者さんの心身のリラックスと健康状態の改善に貢献できます。常に患者の状態を最優先し、安全で効果的な足浴を提供しましょう。
足浴中の観察ポイント
足浴は、患者さんの心身のリラックスや血行促進に効果的な一方で、状態によってはリスクも伴います。そのため、足浴中は患者の状態を注意深く観察することが極めて重要です。ここでは、特に注意すべき観察ポイントを3点に絞って解説します。
皮膚の状態
足浴中は、皮膚の状態を綿密に観察しましょう。特に、皮膚の赤み、腫れ、熱感、水ぶくれなどの異常がないかを確認します。これらの症状は、温度が高すぎる、時間が長すぎる、または皮膚疾患がある場合に起こる可能性があります。 異常を発見した場合は、直ちに足浴を中止し、主治医や看護師長に報告する必要があります。また、皮膚の乾燥状態にも注意を払い、必要に応じて保湿クリームを使用するなどの対応を検討しましょう。 皮膚のトラブルを防ぐためには、適切な温度管理と時間管理が不可欠です。
体温の変化
足浴によって、体温が上昇することがあります。特に高齢者や低体温の患者さんでは、体温変化に注意が必要です。足浴前後の体温を測定し、変化を記録することで、患者の状態を正確に把握することができます。 発熱や寒気などの症状が見られる場合は、足浴を中止し、適切な処置を行う必要があります。体温の変化は、患者の全身状態を反映する重要な指標の一つです。正確な体温測定と記録は、安全な足浴の実施に不可欠です。
患者の反応
足浴中の患者の反応も重要な観察ポイントです。痛み、不快感、痺れなどを訴える場合は、直ちに足浴を中止し、その原因を特定する必要があります。 また、患者の表情や会話の内容からも、精神的な状態の変化を把握することができます。リラックスしているか、逆に不安を感じているかなど、患者の心理状態に配慮した対応が必要です。 患者の言葉に耳を傾け、適切なコミュニケーションをとることで、安全で快適な足浴を提供できます。 患者の安心感を高めるコミュニケーションは、効果的な看護に繋がります。

足浴における注意点と禁忌事項
足浴は、患者さんの心身のリラックスや血行促進に効果的な看護技術ですが、安全に実施するためには、いくつかの注意点と禁忌事項を理解しておくことが不可欠です。これらの点を踏まえることで、患者さんにとってより効果的で安心できるケアを提供できます。
禁忌事項
足浴は、すべての患者さんに行えるわけではありません。以下の状態にある患者さんには、禁忌とされています。
- 末梢循環障害のある患者さん:糖尿病性神経障害や末梢動脈疾患など、末梢循環に問題のある患者さんは、足浴によって火傷のリスクが高まります。熱さを感じにくいため、適切な温度管理が難しく、重篤な症状につながる可能性があります。
- 皮膚疾患のある患者さん:湿疹、皮膚炎、化膿性疾患など、皮膚に炎症や傷のある患者さんは、足浴によって症状が悪化したり、感染が広がる可能性があります。患部の状態によっては、医師の指示が必要となる場合があります。
- 熱傷の危険性のある患者さん:感覚障害のある患者さんや、意識レベルの低い患者さんは、熱さを感じにくいため、火傷のリスクが高まります。特に高齢者や、神経系の疾患を持つ患者さんには、細心の注意が必要です。
- 心臓疾患のある患者さん:心臓に負担がかかる可能性があるため、医師の指示が必要です。特に、心不全や狭心症などの症状がある患者さんには、足浴は禁忌とされる場合が多いです。
- 出血傾向のある患者さん:血液凝固障害や抗凝固剤を服用している患者さんは、出血しやすいため、足浴は避けるべきです。足浴による刺激で出血が誘発される可能性があります。
- 感染症のある患者さん:足に感染症がある場合、足浴によって感染が広がる可能性があります。患部の状態を十分に確認し、医師の指示に従うことが重要です。
注意点
禁忌事項に該当しない患者さんに対しても、安全に足浴を行うためには、以下の点に注意が必要です。
- 水温の確認:患者さんの感覚を確認しながら、40℃程度のぬるま湯を使用します。熱すぎると火傷の危険性があります。必ず患者さんに確認を取り、温度調節を行うことが重要です。
- 時間の管理:足浴時間は、10~15分程度に留めます。長時間の足浴は、皮膚の乾燥や、かえって血行不良を引き起こす可能性があります。
- 皮膚の状態の観察:足浴前後の皮膚の状態を確認し、異常があれば医師や看護師に報告します。発赤、腫れ、痛みなどの症状があれば、すぐに足浴を中止します。
- 患者の状態の観察:足浴中は、患者の顔色、呼吸、脈拍などを観察し、異常があればすぐに足浴を中止します。気分が悪くなったり、息苦しくなったりする場合は、速やかに対応が必要です。
- 清潔な環境の確保:清潔なバケツやタオルを使用し、清潔な環境で足浴を行います。感染予防の観点からも、衛生管理は重要です。
- 転倒防止:足浴中は、患者さんが転倒しないように注意します。滑り止めマットなどを敷くなど、安全対策を講じることが大切です。
- 薬剤との相互作用:患者さんが服用している薬剤によっては、足浴によって副作用が出る可能性があります。医師や薬剤師に確認することが重要です。
これらの注意点と禁忌事項を十分に理解し、患者さんの状態に合わせて適切な対応を行うことで、安全で効果的な足浴を提供し、患者さんのQOL向上に貢献しましょう。
足浴後ケア
足浴後は、患者の状態を丁寧に確認し、適切な記録を残すことが重要です。安全で効果的な足浴の実施は、事後ケアにも表れます。ここでは、足浴後ケアにおける重要なポイントを2点に絞って解説します。
記録方法
足浴の実施記録は、看護記録に正確に記録することが不可欠です。記録内容には、以下の項目を漏れなく記載しましょう。患者さんの状態を正確に把握し、今後のケアに役立てるために、詳細な記録が求められます。
- 実施日時
- 患者の状態(例:疼痛の有無、皮膚の状態、体温)
- 水温
- 実施時間
- 患者の反応(例:リラックスできたか、不快感があったか)
- 使用した物品
- 観察事項(例:皮膚の発赤、腫れ、水ぶくれなど)
- 異常があればその内容と対応
記録は簡潔で分かりやすく、他の看護師が読んでも内容を正確に理解できるよう心がけましょう。必要に応じて、写真やイラストなどを活用するのも有効です。記録は、医療ミスを防ぎ、質の高い看護を提供するために非常に重要です。
患者の状態確認
足浴後、患者の状態を十分に観察することが大切です。足浴によって血行が促進されるため、皮膚の状態の変化に特に注意を払いましょう。また、患者の主観的な感想も丁寧に聞き取り、快適なケアを提供することが重要です。以下のような点に注意して観察を行いましょう。
- 皮膚の温度や色、発赤、腫れ、水ぶくれなどの有無
- 患者の自覚症状(例:痛み、痒み、痺れなど)
- 体温の変化
- 患者の気分や精神状態の変化
異常が認められた場合は、速やかに医師や看護師長に報告し、適切な対応を行いましょう。患者の安全と快適さを最優先に考え、迅速かつ的確な判断と行動が求められます。些細な変化も見逃さず、常に患者の状態をモニタリングすることが、安全な足浴の実施に繋がります。
まとめ:安全で効果的な足浴の実施に向けて
この記事では、看護師が患者さんのために安全かつ効果的に足浴を実施するための包括的なガイドラインを提供しました。足浴は、一見シンプルなケアですが、適切な手順と注意深い観察によって、患者の血行促進、リラックス、精神的安寧に大きく貢献します。 しかし、禁忌事項や注意点も存在するため、深い理解と熟練した技術が求められます。
足浴を行う前に、患者の状態を十分に把握し、禁忌事項がないかを確認することは非常に重要です。 準備段階では、必要な物品をきちんと揃え、清潔な環境を確保することで、感染リスクを最小限に抑えることができます。 そして、足浴の実施中は、患者の皮膚の状態、体温の変化、表情など、細やかな観察を継続することで、不快感や合併症の早期発見に繋がります。 手順を一つ一つ丁寧に、そして患者の反応を常に意識しながら進めることが、安全で効果的な足浴の実施につながります。
足浴後も、患者の状態を注意深く観察し、記録を残すことで、継続的なケアの質を高めることができます。 今回学んだ知識と技術を活かし、患者さん一人ひとりに寄り添った、安全で効果的な足浴を提供することで、患者さんのQOL向上に貢献していきましょう。 日々の実践を通して、より高度なスキルを習得し、専門家としての成長を続けることが、看護師としての使命と言えるでしょう。
この記事が、看護師の皆様の足浴に関する知識・技術の向上に少しでも役立てば幸いです。 患者さんの快適な療養生活を支えるため、これからも学びを深め、安全な看護を実践していきましょう。
監修者プロフィール

宮本 大輔
聖ルチア病院、福岡県立精神利用センター太宰府病院にて勤務
2017年 リアン訪問看護 設立
2022年 ネクストリンク訪問看護 設立
2024年 地域創生包括支援協会 理事
【資格】
・看護師
・相談支援専門員
・サービス等管理責任者

出利葉 貴弘
-医療・福祉分野の情報発信とDX推進を担う事業責任者
株式会社LIH 代表取締役
-Webマーケター/コンテンツディレクター
福岡を拠点に、これまで500社以上のWeb制作・マーケティング支援を行ってきました。2025年より「訪問看護テックナビ」の責任者として、医療・福祉分野の情報発信やIT導入を推進しています。
訪問看護で働く方々や、利用者・ご家族のために、「わかりやすく信頼できる情報」を届けることが私たちの役割です。本サイトを通じて、現場を支える力になれれば幸いです。
【経歴】
2015年 個人事業にてWebマーケティング業を開始
2016年 アイティーラボ株式会社(久留米市) 設立
2018年 株式会社LIH(福岡市) へ社名変更
2025年 株式会社テックナビ 取締役就任「訪問看護テックナビプロジェクト開始」
【保有スキル・資格など】
・Web制作(ディレクション・設計・ライティング)
・SEOコンサルティング(実務10年以上)
・AI×業務効率化コンサル